
最近毎年行っている国立科学博物館の夏の特別展のレポート記事ですが、
今年も頑張ってやっていこうと思います!

スタッフ数名でリレーしていきますが、第1弾はPGから。
参考にしてもらえたら嬉しいです!
◎NHKスペシャルとの関連
さて、ご存知の方はたくさんいると思いますが、
この特別展は5月に放送されたNHKスペシャル「生命大躍進」と内容がかなりリンクしています。
会場内のポイントポイントで、放送に使われたものと同じ最先端のCG映像が、
短くまとめられて流れていますし、紹介される生物たちも、放送を観た人なら
「あっ、この生物観た!」と思うものの化石がたくさん展示されています。
主要なものは再現モデルもありますし。
(この、最先端のコンピュータグラフィックスはかなりレベルが高いと思います!
ほとんど実写のような感じですよ)
ただ、NHKの番組のほうは全3回あり、
それぞれの回ごとにメインのテーマがあり、それに沿った内容をドラマ仕立てっぽく
追っていく感じがありましたが、科博の特別展では、全体を均等に見渡せる感じです。
※番組のテーマは
第1集--目の獲得
第2集--胎盤の獲得
第3集--知性の獲得
でした。
ちなみに、「生命大躍進 第1集~第3集」は8月8日(土)の深夜に連続で再放送があるみたいですから、興味のある方は調べてみてください。

◎進化の躍進って?
さてさて、今回のタイトルは「生命大躍進」なわけですが、躍進とはなんでしょう?
辞書によれば、「めざましい勢いで進出・発展すること」とあります。
それにわざわざ「大」の字をつけているってことは「ものすごくめざましい勢いで進出・発展すること」っていう意味でしょうか。
実は、最近の遺伝子の研究によって、進化の概念が変わってきているようです。
今までは、生物の進化は長い時間をかけて少しずつ進むというのが定説でしたが、
実は遺伝子の変化によって、短期間にものすごい勢いで進化が進むことがたびたびあったらしいことが分かってきました。
つまり今回の特別展の重要なポイントは、
遺伝子の変化によって、生物は時々信じられないほどの躍進を遂げているということなんですね。
それを、DNAの研究から導き出し、最新の科学的成果として見せてくれるということです。(もちろん貴重な実物化石も盛りだくさんですよ)
◎生命の起源は?
さて本題、ますは生命の起源です。
生命の起源について、確実にこれだ!といえるものはまだありません。
それはそうですよね、なんせ40億年~37億年も前のことですから。
ただ、「こうであろう」というものはかなり固まっているようです。
どうも生命の一番最初は、硫化水素とメタンの溶けた300℃もの熱水が噴き出す、深海の岩石の割れ目のあたりで始まったらしいと考えられています。
いわゆる海底の熱水噴出孔ですね。

深海の海底から吹き出す黒い熱水
出典:深海の生物 ERICH HOYT FIREFLY出版社
そこで適当に揺らいでいた生命の元になる素材たちが、
くっついたり離れたり、タテになったり横になったり、
いろいろして化学変化しているうちに、回りにある素材も取り込んで
原始的な、命のもとみたいな状態になった。
かなりいい加減な説明ですが、おおむねこんな感じでしょうか。
その生命の痕跡のある岩石もちゃんと展示されています。
37億年前のものと、35億年前のものです。かなり貴重ですね。
◎エディアカラ生物群
生命は、それから長~い時間、少なくとも外見上はたいした進化はせずに過ごします。うーんと小さい、菌みたいな状態が長いんですね。
途中、地球全体が氷りついて上から下まで真っ白になるという、全球凍結という事態が2回あったと考えられていますね。

また逆に、彗星が激突して地球全体が真っ赤っかになったこともあったようです。

生命はそんな過酷な状態をなんとか生き延びて約30億年過ごし、エディアカラ紀と呼ばれる時代、やっと地球も氷が溶けて過ごしやすくなった時に、ついに様々な大型生物が発生します。
この時代のエディアカラ生物群と呼ばれる生物の化石がいろいろ展示されていますよ。
ちなみにこの生物たちはまだ「目」を持っていなかったようです。
◎カンブリア大爆発!
エディアカラ紀は、カンブリア紀の前の時代になりますが、約1億年くらい続きました。
しかし、カンブリア紀の始まりまでにはほとんど絶滅したと考えられています。

ところが、約5億4100万年前の地層から、突然それまで見られなかった
固い外骨格を持った生物化石がたくさん出てきます。
これが有名なカンブリア大爆発!!

数えるほどしかいなかった生物種が、500万年ほどのあいだに
一気に数万種まで増加したといわれる一大イベントです!
下積みの苦労が実って大ブレーク

カナダ・ロッキー山脈のバージェス頁岩(けつがん)や、
中国雲南省のチェンジャン、オーストラリア・カンガルー島の化石群からとても状態の良い化石がたくさん発掘されていますが、今回はバージェス頁岩とチェンジャンで発掘された、たくさんの種類の化石の実物を見ることができますよ。
門外不出の貴重な化石たち、もちろん日本初公開

ちなみに、年代的にはチェンジャンのほうがバージェスより少し古いです。
そして、これらの生物たちは目を持っているんですね。
◎目の獲得
ここでちょっと、NHKのテーマにも乗っておこうと思います。
まさに遺伝子的な大躍進の話につながりますし……。
生物たちは、カンブリア大爆発の時期に目を獲得してからは、
それ以降はすべてが目を持ったと考えられています。
もちろん目にも様々な種類があり、進化の段階があるのですが。
では一番最初の目の元は何だったのか?
それはどうやって獲得したのか?
じつは、植物の光合成の遺伝子を、動物は自分の体に取り込んだのではないかと考えられているんです。
光の有る無しを感じるDNAの仕組みはけっこう複雑で、一から作るとなるとかなり長い時間がかかりますが、植物が作り上げた仕組みをいただいてしまえば余計な時間をカットできる。てっとり早くいただいちゃえってわけですね。
私たちが外界を見る視覚という機能は、元をたどっていけば
植物の光合成の仕組みから発展したものだったかもしれないというわけです。
NHKの番組では、クラゲの小さな目が、海にいる渦鞭毛藻(うずべんもうそう)の光受容装置を作る遺伝子とそっくりなことから、クラゲはこの遺伝子を偶然かエラーかで取り込んでしまった。
そして世代を重ね、様々に進化していく過程で、この機能はより強化され洗練されていったのではないか、という感じでまとめていました。
実際のところ目の発生については諸説あるようで、「生命大躍進」の図録では
アンドリュー・パーカーの「光スイッチ説」を紹介しつつ目の獲得について
別の視点から言及しています。
目を進化させることがどれほど重要だったかについては、
「複眼」vs「カメラ眼」という視点で書いてみます。
長くなったので、ひとまずいったん休憩して、Vol.2に続きます!
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