太古の哺乳類展 レポートVol.2

さて、上野の国立科学博物館の特別展
太古の哺乳類展 ―日本の化石でたどる進化と絶滅―
の見学&レポート第二弾です。今回もP・Gよりお届けです。

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さて第一弾は、展示会場の最初のところ、恐竜とほぼ同時期に現れた哺乳類が、恐竜におびえながら長い時間を過ごし、6500万年前の大量絶滅を生き残ってその後多様化していくという内容でした。

この第二弾では、ネズミ程度の大きさだった哺乳類が、新生代に入り急速に多様化、大型化する過程の、特に偶蹄類について見てみたいと思います。

■最初はいろいろ実験段階

恐竜が絶滅して中生代が終わり、新しく始まった時代「新生代」は大きく三つに分かれ、それがまたさらにいくつかに分かれますが、新生代に入って一番最初の時代を「古第三紀」の「暁新世」といいます。

この時代の哺乳類は、まるで壮大な実験でもするかのようにさまざまな方向に進化が進み、多種多様な種が現れました。ただし、残念ながらこの時代の哺乳類はほとんどが次の時代には滅んでしまったようです。そして日本ではこの時代の化石は発見されていません。

日本で発見されたものは「曉新世」の次にあたる「始新世」のもので、トロゴッススやヒゴテリウム、コリフォドンの顎の化石が今回展示されています。約5000万年前のものだそうです。ヒゴテリウムは生態模型も展示されてますよ。


■現代にもつながる哺乳類の登場

「曉新世」の終わり頃から次の「始新世」のはじめ、年代的には5500万年前頃から、進化がさらに進み「蹄(ひづめ)」をもった「有蹄類」が現れます。
これは日本でも数種類の化石が発見されていて展示されています。
有蹄類も2種あって、蹄が奇数の奇蹄類と偶数の偶蹄類に分かれます。
ウマやサイ、バクが奇蹄類で、ウシやカバ、キリン、ラクダ、シカなどは偶蹄類です。

両者とも元は5本の指があったわけですが、親指からはじまって段々と外側の指を減らし、残った指を強くして蹄に変えていきました。

さて彼らはなぜ指を減らし、蹄に変化させたのでしょうか?
それには地球の変化が大きく関わっているようです。なにしろ草食ですから環境の変化、植生の変化は生命の存続にかかわります。


■環境の変化が蹄を作った?

新生代の始めの頃、始新世の中頃までは地球は全体に温暖でした。北極や南極には今のような永年氷床がなくて豊かな森林が広がっていたそうです。北海道も年平均気温が17度にもなっただろうとのことです。今はだいたい10度を切るようですからだいぶ暖かかったでしょう。(となると、もっと南のほうは夏なんてかなり暑かったでしょうね)

しかしその後環境が変化し、寒冷化が始まります。豊かな森林があるうちは、敵から身を隠すことも簡単だし餌となる植物も豊富にあったので、わりとのんびり暮らしていけたでしょう。

しかし寒冷化が始まり全体が乾燥化すると、豊かな森が減少して草原などが広がるようになったようです。
そうなると、草原に出なければならなくなったわけですが、今度はひらけた環境ですから敵に見つかりやすくなります。当然敵を見たら高速で逃げなければなりません。

敵から高速で逃げるために常につま先立ちのような状態になり、体重のかかる指を丈夫にして蹄に進化させ、逆に不要な指は退化していったと考えられているんですね。


■奇数と偶数

しかしなんで奇数と偶数に分かれたんでしょうか?
これはおそらく環境に適応した結果と言われているようです。

奇蹄類は真ん中の指(人間でいう中指)が発達し、その指に体重がかかるのに対して、偶蹄類は第三指と第四指の二本(人間でいうと中指と薬指)が発達し、その二本の真ん中に体重がかかるようになりました。

まっすぐ走るだけなら、真ん中の指の中心に体重がかかりますので、そこがしっかりしていればいるほど速く走れます。奇蹄類は草原などに進出、サイは3本指、ウマなどはついに1本だけになってしまいました。たしかにウマは草原を走るのに特化したような動物という気がしますよね。

それに対して偶蹄類は、草原だけでなく岩場などにも進出したと考えられているようです。不安定な岩場や地面で横にも体重がかかったり、後ろに下がったりするには二つの蹄(プラス補助の蹄)があったほうが適していたということでしょうね。


■消化の仕方が違う

この両者には内臓の違いもあります。
地球環境が変化して森林が後退し、固いイネ科の植物を食べるようになったようですが、そうなると消化の問題が出てきます。
ウマなどの奇蹄類は胃を一つしか持っていないので、盲腸を巨大化させて、セルロースを発酵させて消化しましたが、
ウシなどの偶蹄類は複数の胃を持ち、固いセルロースからも十分に栄養を吸収できるようになりました。
また、偶蹄類は小臼歯が決して大臼歯化しないことも特徴です。
(すべての種があてはまるというわけでもないようですが、そこは生物の多様性ということでしょう)


■繁栄と衰退

奇蹄類と偶蹄類は、ともに一時期は多いに隆盛しましたが、奇蹄類は残念ながらどんどんと数を減らしていき、現在残っているのはウマ、サイ、バクくらいで、目(奇蹄目)全体が絶滅の危機に瀕しているとのことです。
それに比べると偶蹄類は、ウシ、カバ、シカ、キリン、イノシシ、ペッカリー、ラクダ、マメジカ、ジャコウジカなど多くが現代まで存続しているので、両者の生き残り勝負は偶蹄類の勝ちという状況でしょうか。

その原因はわかりませんが、偶蹄類は岩場などの様々な環境で適応したこと、複数の胃を持ち少量の食物から無駄無く栄養を取れる消化器官を持っていることが理由かもしれません。

もちろん私たちが生きてる間に絶滅するわけじゃないんですが、生物の歴史の長いスパンで見た場合には、ウマなどの奇蹄類はもう絶滅間近の動物なんですね。


あらためて、環境への適応という要素が進化のカギだなと思いました。

さて今回は有蹄類にポイントをおきましたが、次回以降は
日本が太古は大陸とつながっていてさまざまな動物たちが入ってきた話や、世界的にみても日本で多く発見されている絶滅動物、ゾウの話などをアップしていく予定です。

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